生活習慣病
心不全について知っておきたい!心臓の負荷ってなに?日常生活で注意すべきことや進行度など
心不全のことを病気と思っている人も多いですが、実際には心不全というのは病気の名前ではありません。何らかの原因によって心臓の機能が低下し、体の各部分に影響が出る状態のことを言います。
心不全の原因には具体的な疾患の場合もありますが、原因がよくわからない場合もあります。
心不全を説明する上で「前負荷」と「後負荷」という言葉は欠かせません。心臓は血液を送り出す働きがある為、ポンプに例えられることがよくあります。
そしてその血液を送り出すときや、血液が戻ってくるときに心臓にある程度の負荷がかかります。
「前負荷」ってなに?
前負荷というのは心臓が収縮する直前にかかる負荷のことを言います。
収縮する直前ということは、心臓が拡張しているときということで、静脈から血液が心臓の方に戻ってきたときということです。
静脈から戻ってくる血液が多いほど、たくさんの血液を心臓に入れないといけないので、心臓に大きな負担がかかります。また、心房の収縮力が高まっている場合も負荷が大きくなります。
「後負荷」ってなに?
後負荷というのは心臓が収縮した直後にかかる負荷のことを言います。
収縮した状態のときの負荷ということで、心臓が血液を送り出しているときということで、動脈から血液が出て行っているときということです。
これも前負荷と同様に、送り出す血液が多いほど心臓に大きな負担になりますし、心室の収縮力の高まりも負担になります。
前負荷も後負荷も増大する心不全
心不全の場合、心臓の収縮力の低下を補うため、脳が指令を出して、収縮力の増大と血液の増加を起こします。その結果、前負荷、後負荷共に心臓にかかる負担が増大するのです。
心不全は機能が低下した心臓を、頑張らせようとする体の働きが、むしろ心臓の機能を悪くしてしまうという悪循環が生まれるのです。
切れや息苦しさは心不全の始まりかも!?進行の程度の5段階
心臓の動きが悪くなり、血液が十分に体中に送れなくなっている状態が「心不全」ですが、医療機関では治療にあたって重症度を5段階に分けています。
判断基準
心不全の重症度は、「呼吸困難」や「むくみ」、動作への影響などを基準につぎのように分類されています。
0度:高血圧などの基礎疾患はあっても、心不全は起こしていない状態。
I度:階段を普通に上がっただけで息切れ。この段階では心不全ではありませんが、兆候があるため、十分注意が必要です。
II度:階段を上ると苦しい、途中で休まないと登れない、夕方足がむくむ、などの症状が現れます。この段階になると「心不全」ですが、ここで治療を開始すれば治ります。
III度:普通に歩いていても息が切れる、足にわずかだがむくみがある、安静時も呼吸困難になることがある、などの症状があり、入院が必要です。
IV度:顔を洗ったり、排便などの動作でも息が切れます。安静にしていても、仰向けに寝られず、胸が苦しくなります。至急、入院して治療が必要です。
V度:寝たきりで安静時にも呼吸が苦しい状態になります。心臓に水が溜まったりしますので、入院して強力な治療を続ける必要があります。
早期の治療がポイント
心不全はきちんと治療しないと、突然というほど急に悪化する場合もあります。合併症として起こる心不全の場合、使用できない薬物もあり、しっかりした検査と診断が治療上重要です。
心不全を重症化させないように、その主な原因となる生活習慣病の予防に注意しましょう。
心不全手帳を活用しよう!記録手帳と連携手帳について
心不全は、毎日の状態の記録を治療に連携させていくことが治療上効果的です。日本心不全学会では、製薬会社などの協力で、心不全手帳を発行して利用を進めています。
自分で記録する「記録手帳」
心不全手帳は2冊セットになっており、一つは自分で毎日の状態を記録する「記録手帳」。日々の体重、血圧、脈拍や、薬の服薬、診察などを記録していくと同時に、心不全になる兆候を見逃さないためのチェック項目が盛り込まれています。
治療ガイドの「連携手帳」
連携手帳には、自己管理に必要な知識がまとめられています。心配になったときや、治療が変化したときなどは、これを読むとその背景がわかるようになっています。
セルフモニタリングは治療効果を高める
心不全は、生活習慣病から起きることが多く、自分の生活をきちんと管理し、病状を「セルフモニタリング(自分で状態を把握する)」できることが、治療効果を高めることにつながります。この手帳は、記録することで自分の状態を把握でき、また正しい知識を常に手元におくことで、患者自身が病気と治療に理解を深めることができます。
もらえなければ、医師に問い合わせを
生活習慣病は、医療機関での生活指導講習が行われますが、この手帳は教材としてだけでなく、医療機関とのコミュニケーションツールにもなり、医療側にとっても診断や治療にとても役立ちます。とくにいろいろな診療科や多くのスタッフによる治療になるケースが多い心不全などでは、この手帳にきちんと記録をしておけば、病状や治療方法を取り違えるようなことが減らせます。日本心不全学会に加入している医療機関であれば手に入れられますので、医師からもらえなかった場合には、こうした手帳の存在を問いかけて入手し、活用しましょう。
心不全を悪化させないためにできること!日常生活の中ではこれを注意して、心臓の負担軽減!
心不全というのは、心臓の機能が低下したことによって、心臓を中心として体のいろいろな場所に症状が出るものです。心不全の原因は様々な心臓病や循環器系の病気などがあり、その症状も実に多様です。
心不全を起こしている場合、心不全の原因となる病気が進行していなくても、心不全の症状が進行したり悪化することがあります。
ですから原因となっている病気が進行しないようにする以外にも、心不全の悪化につながるような行動には注意を払う必要があります。
日々の生活の中で注意すること
運動
心不全の重症度によって運動制限が設けられます。しかし心臓に負担がかからないようにするためと思って、過度に運動を制限するのは健康を維持するという観点でもよくありません。心不全の程度に見合った運動は、健康を維持するために大切な生活習慣です。
体重管理
上記の運動は体重管理のためにも重要です。肥満は心臓に負担をかける要因になりますから、運動以外にも、食事管理をすることも大切です。
塩分制限
塩分の摂りすぎは、水分排泄を妨げる要因になります。
禁煙
喫煙は血管を収縮させます。喫煙が体に害があるのは言うまでもありません。
アルコール制限
アルコールの過剰摂取は心不全の原因になることがあります。場合によっては飲酒を控えることによって、心臓の働きが劇的によくなることがあります。
熱いお風呂
熱いお風呂は、一気に心臓の動きを高めます。これは過度な運動をするのと同じくらい心臓に負担をかけることになります。お風呂に入る習慣は健康管理のためにはよいですが、ぬるめのお湯にじっくり浸かったほうがよいです。
他にも過労や風邪を引くことも心臓に負担をかけることになります。日々の中で負担がどんどん蓄積されていってしまいますから、意識的に注意してあげましょう。
心当たりはない?心臓の機能が低下する心不全のチェックリスト
心不全では、心臓の機能が低下して、血液を全身に十分に送れなくなります。非常に苦しく、命に関わります。
早期発見・早期治療
心不全は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を持っている人だけではありません。加齢とともにそのリスクは高くなります。しかし、心不全は早期に治療を開始すれば完治する病気でもあります。そのため、早めにその兆候を見逃さないことが大切です。
心不全チェックリスト
つぎの項目は、心不全に関係する症状です。心当たりはありませんか?
1.食欲がなくなる
2.手足の先がつめたい
3.足や顔がむくむ
4.だるい、疲れやすい
5.急に体重が増えた
6.普通の動作で息切れがする
7.就寝後、何度も夜中にトイレに行きたくなる
8.布団に横になると咳が出る
9.息苦しくて眠れない
高齢者は10人に1人
日本全体で100万人、毎年10万人が心不全を発症していると言われています。とくにストレスの多い現代では、そのリスクも高くなっています。チェックリストの項目は、毎日の生活のなかで「疲れかな?」と思っていることかもしれません。もし心当たりがあるなら、早めに医師に相談することをおススメします。とくに、1ヵ月以上、そうした症状が続いていたら、それは心不全の兆候の可能性が高いと言えます。すぐに、かかりつけ医などで診察しましょう。
(Photo by: [http://www.ashinari.com/2013/08/28-381384.php])
著者: カラダノート編集部