育児
脳血管疾患「もやもや病」を持つ子供が学校で気を付けるべきこと
もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)という病気をご存知でしょうか?この病気は、小児(5歳~10歳)と成人(30歳代)に発症する、原因不明の脳血流障害の病気です。
ここでは、小児のもやもや病、特に学校生活の中で気をつけたいことについてご説明したいと思います。小児のもやもや病とは、先程のように、過呼吸を行うことで、虚血性発作を発症します。
病気が起こるプロセス
この病気は頚動脈が徐々に狭窄や閉塞を起こし、慢性的な血流不足に陥ります。そして脳深部にも血液が不足し、それを解消するために、無数の網目状の異常血管(タバコの煙が立ち上がったようにもやもやとして見える血管)が新生します。
血管が新生されても血流は不足している状態なので、興奮や空気を吐き出しすぎるなどの原因によって過呼吸が起こると、脳血管の収縮が起こり、血流が一気に不足して、脱力症状を引き起こすことになります。
具体的な症状
例えば激しく泣いたり走り回った後や、笛を吹いたり、また熱いものを冷ますためにフーッと息を吹きかけて冷まそうとしたときなどに、脱力症状(突然意識がボーっとした感じになり、歩けなくなったり、ろれつが回らなくなったり)と言ったことが起こります。
これを一過性脱力発作と言います。一過性という名前の通り、この発作が起こって数分ほど経つと元の状態に戻ります。しかしこのような発作が繰り返されると、脳梗塞を生じ、手足の麻痺・言語障害・知能障害などの後遺症を残すことになる可能性がありますので、過呼吸を起こす可能性のある行動を抑制する必要があります。
一過性脱力発作を起こしたときの対処法
もし一過性脱力発作が起きたと思われた場合、次のことを確認します。もし脳梗塞の可能性がある場合は、発作時の観察が治療に役立ちます。30分程経っても状態が回復しない場合は、緊急に病院に連れて行く必要があります。
<発作時に確認すべきこと>
◆意識がはっきりしているか、名前が言えるか?
◆手足の麻痺か、言語障害か?
◆手足の麻痺であれば、4本のどの肢に麻痺があったか(右、左に関しても)
◆症状は何分間持続したか?
◆誘引となった原因は何か(泣いたり大声ではしゃいだりなど)
また、幼稚園、小・中学校の先生方へ、特に発作の起こりやすい音楽、体育などの教科の先生へ次の11項目に気をつけてもらうようにお願いをしておくことが大切です。
<幼稚園、学校生活において先生方へ伝えておくべきこと>
1)発作を誘因させるような行為(ピアニカ・ハーモニカ・笛の演奏や、風車・ストローの使用等)を止める。
2)数十秒~数分間でおさまる一過性脱力発作を見逃さないようにしてもらう。
3)マラソンや水泳のようなスポーツでの過呼吸ではあまり脱力発作は生じないが、稀にはあるので注意を払ってもらう。
4)音楽会、運動会などの催しの際は、応援などで大声を出す場合があるので、特に注意してもらう。
5)発作があった場合は必ずその内容を保護者の方へ知らせてもらうようにする。
6)発作がひどく病院を受診する可能性の高い場合は、予め緊急で行く病院を決めておく。
7)嘔吐を伴うような頭痛が起こった場合、昼寝を取らせてもらう。もし、意識がおかしい場合は病院へ連れて行く。
8)もし失禁が起こった場合は、意識障害がなかったか注意してもらう。
9)もやもや病が原因の知能障害がある場合、記憶力や計算力が低下していることを留意してもらい、その上での指導を行ってもらう。
10)慢性期では、手足の麻痺ではなく、一瞬目が見えなくなる発作が生じることがあることも留意してもらう。
11)痙攣発作は過労や睡眠不足が原因で生じることもあるので、その場合はあまり疲れないように気を付けてもらう。
(参考HP:もやもや病について/佐賀大学医学部脳神経外科)
最後に
保護者の方は、学校の先生に学校生活での留意点を説明されるだけでも、難しいものがあると思います。
子供が何を行ってもしかってはいけない、はしゃいでいたら抑えるよう促さなければいけないと言うのは、学校の先生にとっても骨が折れると感じ、保護者の方も頼みにくい状況にあるかもしれません。
しかし、15~16歳程度までの成長を乗り越えると、後は後遺症も残さず、順調であるようです。周囲の大人やお子さんとよく話し合った上で、協力して乗り越えていくことが重要と言えます。
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著者: カラダノート編集部