生活習慣病
心臓病にはどんな種類があるの?安定型狭心症とは?ほか、危険因子や原因となるもの
心臓は、「心筋」と呼ばれる筋肉でできています。この筋肉が絶妙な動きで全身に血液を送り込むことで、人間は生命活動を維持しています。
しかし、この心筋に酸素と栄養素を運ぶための血管である「冠動脈」は、命のパイプラインとも呼ばれ、人が生きていくために重要な役割を果たしているのですが、この大事な冠動脈の内側が脂肪などでできたプラークによって狭くなり、心臓へ十分な血液を供給できなくなる虚血性の疾患を狭心症といいます。
本来、労作時狭心症の症状は、労作時に起こります。例えばいつもより早いペースで歩いたり、階段の昇降や坂道を登ったときなどに、それまで感じたことのない、胸の中央部が締め付けられるような感じ、もしくは胸に何かを押し付けられたような圧迫感を感じます。これは少し休むとおさまってしまう(ほとんどが15分以下)のが特徴です。
痛みが強い場合は、左肩~腕や顎の部分まで痛みが広がります(放散痛)。また、みぞおちの部分が強く痛むので、人によっては胃の痛みと勘違いをしてしまう方もいます。
痛みの場所はあまりはっきりせず、「ここが痛い」と痛みのポイントを指で示せるようであれば、肋間神経痛や胃痛、胃痙攣などの場合もあります。症状の持続時間は、数分程度です。
ほとんどの場合は5~10分も安静にしていれば症状は一時的に落ちる来ます、長くても15分以上は続かない場合がほとんどです。
また、安静時狭心症(異型狭心症:冠攣縮)のような、身体に負荷をかけずに安静にしているときでも、同じような胸痛や胸部圧迫感などの症状が動作と関係なくでることがあります。
これは冠攣縮により冠動脈が痙攣様に収縮してしまうため、冠動脈が動脈硬化などで細くなった時と同様の症状が一時的に作り出されたために起きる現象です。
これら労作時狭心症と安静時狭心症(異型狭心症:冠攣縮)のような安定型の狭心症は、きちんと治療することによって、予後は比較的良いとされていますが、狭心症だと気付かずに症状が悪化し、心筋梗塞へと進行してしまう「不安定狭心症」という狭心症もあるため、数分以上長く続く胸痛を感じたり、息苦しくなったり、胸部が圧迫される自覚症状のある方は、早めに専門医を受診することをお勧めします。
心臓弁の機能が低下する心臓弁膜症…近年動脈硬化が原因となっているものが増加している!
心臓は4つの部屋に分かれています。これらの部屋に順序良く血液が流れることによって、全身に栄養豊富な血液が巡り、役目を終えた血液がきちんと心臓にかえって来られるのです。
そして、その一方向への血液の循環を維持しているのが、心臓弁膜です。弁は血液が逆流しないためについているもので、血液の正しい循環には欠かすことができません。
心臓弁膜がこわれたら?
心臓についている弁の働きが悪くなり、弁がうまく開かなくなると血液が通りにくくなります。
この状態を狭窄症といい、弁がうまく閉まらないことで逆流が起きるようになると閉鎖不全症となります。
場合によっては開くことも閉まることもうまくいかなくなり、狭窄症と閉鎖不全が同時に発症することもあります。
心臓には4つの部屋があり、それぞれに弁があります。それぞれの弁に狭窄と閉鎖不全が起こりえるので、心臓では8種類の心臓弁膜症が起こりえます。中でも多くの場合で問題となるのが、心臓の左側、左心室と左心房に関係する弁膜症です。
この場合全身に送る血液に支障が出る、大動脈弁狭窄症などになり、場合によっては緊急手術が必要になります。
増えている動脈硬化からの心臓弁膜症
心臓弁膜に異常が生じる原因はいくつかあります。
中でも多かったのはリウマチ熱(小児の頃に細菌感染が原因で風邪に似た症状を起こす)を原因とする心臓弁膜症です。
リウマチ熱による影響が、長い年月をかけて大動脈弁、僧帽弁に障害を与え、弁が肥厚・硬化していくのです。しかしこのリウマチ性弁膜症は近年減少傾向にあります。
これに対して近年増加傾向にあるのが、動脈硬化を原因とする弁膜症です。
これは高齢化に伴って増えているものと考えられていて、動脈硬化性弁膜症の場合も、大動脈弁、僧帽弁に発生し、弁が肥厚し、硬化して狭窄症を引き起こします。
心臓弁膜症の原因は細菌感染や先天性のものもあります。しかし動脈硬化が原因となる弁膜症が増えているのは無視できません。
心臓が大きいとなったら何の病気?「壁が厚くなる心臓肥大」と「内腔が大きくなる心臓拡大
自分の心臓の大きさはどれくらいか知っているでしょうか。心臓は本来、握りこぶしほどの大きさと言われています。しかし、生活習慣などによってはその影響で、心臓が通常の大きさよりも大きくなってしまうことがあります。
心臓の壁が厚くなる「心臓肥大」
心臓肥大の原因のほとんどは高血圧です。高血圧などによって心臓から血液が送り出されるとき、心臓の負担が大きくなると、心臓の筋肉が増強します。
つまり心臓、特に心室の壁が厚くなるということです。筋肉が増強するというといいことのように思えますが、これは心臓が無理をした状態で仕事をしています。
そのため、特に心臓が多くの血液を必要とするときに、十分な血液が回らなくなり、虚血状態になりやすくなります。そこから狭心症などの虚血性心疾患の発症につながるのです。
同じ心臓が大きくなる心疾患では、心臓肥大の方が聞き馴染みがあると思います。
そのためレントゲン検査などで心臓が大きいことを告げられると、すぐに心臓肥大が思い浮かぶ方が多いようです。
ですが、心臓が大きくなる心疾患には以下の心臓拡大という心疾患もあります。
心臓の内腔が大きくなる「心臓拡大」
心臓肥大が心臓の壁が厚くなるのに対して、心臓拡大は心臓全体の壁が薄くなり、心臓の中の空間全体が大きくなることです。これは心筋炎のような心臓全体の炎症の後になることがあります。
心臓拡大の典型例は拡張型心筋症です。これは心筋の細胞の性質が変わることで、特に心室の壁が伸び、心臓内部の空間が大きくなります。
この心臓拡大はウイルス感染などによって起こることもありますが、心臓肥大と同様に、高血圧や動脈硬化が原因になることもあります。また、アルコールのとりすぎも要因になるとされています。
いずれの場合も高血圧などの生活習慣病が関係します。心臓の病気ということで、生命の危機に比較的簡単に直結しますので、無視することができません。
CKDの人は注意が必要!腎臓病が心臓疾患を引き起こす!
近年、慢性腎臓病(CKD)が、心臓・冠動脈疾患のリスクファクターとして注目されています。
慢性腎臓病、とくに透析をしている人には、心臓への負担が大きく、循環器系の合併症の発症率が高くなっています。
腎臓機能の低下は心臓への負担増
慢性腎臓病では、腎機能の低下によって、老廃物が血液中に長く滞留することになります。
これが血管を傷つける原因となり、狭心症や心筋梗塞を引き起こしやすくなります。
また、水分が腎臓から排出できなくなると、心臓に水が溜まった状態になり、心不全を引き起こします。
腎臓病ではできない検査や治療
腎臓が悪いと、造影剤による心臓の検査ができません。
そのため、慢性腎臓病の場合には、心エコーや心電図で早めに心疾患の徴候をキャッチすることが重要です。
動悸や息切れがあったら、心臓の状態を早めに検査する必要があります。
それ以外にも、腎臓病のためにできない心臓の治療や、使用できない薬がいくつもあります。
心臓に負担をかけない生活を
成人の25人に一人はCKDといわれています。
若くても腎臓を悪くしてしまうことはありますから、元気な方も健康診断で蛋白尿が出たら要注意。
また、次のことは腎臓病だけでなく、多くの生活習慣病のリスクを高めます。
・喫煙
・高脂肪、高塩分の食生活
・過度の飲酒
・運動不足
・水分の摂り過ぎ、摂らなすぎ
腎臓病と併せて、高血圧や糖尿病も心臓へのリスクファクターです。
これらを併せ持った人は、心筋梗塞を起こす確率が6.5倍、という調査結果もあります。
腎臓病の方は、こうした合併症にならないように、食事療法をはじめ、生活全般を心がけることが必要です。
心当たりのある方や、今すでに腎臓の治療中の方は、その先にある心疾患を招かないように、生活の改善に十分注意しましょう。
心臓の検査で何がわかる?健康診断にもある心臓の検査まとめ
職場の健康診断、病気の疑いがある場合、経過観察など、検査は色々な場面で行われます。
心臓の異常が発見された場合、どのような検査が行われるのでしょうか。
血液検査
体の中は、ホルモンをはじめとする様々な物質があります。
異常なときに上がる物質、下がる物質などを、血液中の量から判断します。
心電図
心臓の動きは、電気信号によって行われています。
その電気信号をキャッチし、心臓の中で起こっている電気の変化を見る検査です。
1.安静時心電図
ベッドに寝た状態で測定します。
普段の状態で心臓に異常がないかどうか、確認する検査です。
不整脈があるかどうか、心臓の拍動の強さはどうかなどを検査できます。
2.運動負荷心電図
運動前後、運動中の心臓の変化を見ます。
運動時の状態を測ることで、心臓の筋肉に障害があるかどうか、どの程度の障害なのかを詳しく調べることができます。
3.24時間心電図
1日携帯型の機械を装着し、測定します。
測定とともにその日の行動を記録するので、不整脈などがどこの場面で起こっているかを詳しく調べることができます。
胸部X線写真
所謂レントゲンです。
骨を映しているように見えるので一見関係なさそうに思えますが、レントゲンでは心臓や肺、大きな血管の形を映し出すことができます。
そのため、心臓が大きくなっていないか、心臓の形は正常か、大きな血管の太さはどのくらいかなどを調べることができます。
大きな動脈に限っては、太さや曲がり具合から、動脈硬化がどの程度か知ることもできます。
心エコー・頸動脈エコー
超音波を使って心臓を映し出します。
心臓の大きさだけでなく、動きまで観察することができます。
頸動脈は心臓だけでなく、全身の動脈硬化の進行を知る手がかりになります。
心臓カテーテル
造影剤を使い、細い血管まで映し出せるようにします。
そうすると、血管の形や曲がり具合、太さなどを細かいところまで調べることが可能になります。
また、カテーテルを使うことにより、血管の中の血圧や血流を調べることができます。
その他にも症状や病状によって、追加で検査をすることもあります。
どれも病気の疑いで病院を掛かっている方であれば、健康保険を使うことができます。
人間ドックなどの健康な方を対象とした検査では、自費で行うことになります。
心臓が貧血?虚血性心疾患を予防改善するには、危険因子をおさえよう!
虚血性心疾患という名前を聞いたことがあるでしょうか。
虚血というのは酸素や栄養素がたっぷりの動脈血が減少し、局所的に貧血になることです。
全身の貧血と区別して局所性貧血を言われることもあります。この虚血が心臓で起こる病気が虚血性心疾患です。
冠動脈から心筋に血液が送られなくなる!?
心臓は心筋という筋肉で構成されています。その筋肉を動かすためは、酸素や栄養素が必要で、それを心筋に運んでいるのが3本の冠動脈です。
しかしこの冠動脈が狭窄したり、閉塞したりして、そこから先に血液が送られなくなると、虚血(局所性貧血)に陥ります。この状態のことを虚血性心疾患と言います。
虚血性心疾患というのは具体的な病名ではなく状態を言います。
これを具体的な病名にすると、冠動脈が狭窄し一時的な血液不足になるのが狭心症で、完全に冠動脈が閉塞して血液の流れが途絶えてしまうのが心筋梗塞といいます。
虚血性心疾患は何によって起こる?
虚血性心疾患はがんなどの決定的な病変によって起こるものではありません。
むしろ生活習慣の中の積み重ねによって起こるもので、日々の生活の仕方によって発症を予防出来たり、逆に促進してしまったりします。
・虚血性心疾患の3大危険因子
高コレステロール血症
高血圧症
喫煙
高コレステロールの状態や、高血圧の状態は血管の動脈硬化を促進します。これによって血管の内腔が狭くなったり、血管の壁が肥厚することで血流の停滞が起こります。さらに喫煙は血管を細くしますし、冠動脈の異常な収縮を誘発することもあります。
・その他の危険因子
高脂血症
肥満
糖尿病
高尿酸血症
血液の凝固異常
加齢
遺伝
閉経
ストレス
運動不足
過度の飲酒
虚血性心疾患と深く関係しているのは先述の3大因子以外にもあります。
これらと3大因子は全く独立して虚血性心疾患に関係しているのではなく、それぞれを合併することなどで、より発症の可能性が増します。
虚血性心疾患は心筋梗塞のように突然死の危険性も高まります。そのため日頃の生活習慣を十分に気をつけてあげる必要があるのです。
(Photo by:http://www.ashinari.com/2012/09/12-369784.php )
著者: カラダノート編集部